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最高裁判所第一小法廷 昭和58年(行ツ)120号 判決 1985年6月20日

奈良市東九条町一〇一四-六一

上告人

浜中達也

右訴訟代理人弁護士

吉田恒俊

佐藤真理

相良博美

奈良市登大路町八一番地

被上告人

奈良税務署長

北村佳和

右指定代理人

寺島健

右当事者間の大阪高等裁判所昭和五七年(行コ)第五四号所得税更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和五八年七月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉田恒俊、同佐藤真理、同相良博美の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷口正孝 裁判官 和田誠一 裁判官 角田禮次郎 裁判官 矢口洪一 裁判官 高島益郎)

(昭和五八年(行ツ)第一二〇号 上告人 浜中達也)

上告代理人吉田恒俊、同佐藤真理、同相良博美の上告理由

原判決は以下の理由により破棄を免れないものと思料します。

一、原判決は次のとおり理由不備または判断遺脱の違法がある(民事訴訟法第三九五条第一項第六号)。

1 上告人は本件においては推計課税の必要性が存在しないことおよび仮に推計が必要であったとして本件の推計は不当であること、を主張してきた。ことに推計の不当性については、上告人自らの調査にもとづき、次の二点を主張立証した。

(1) 被上告人が推計の資料として提出する同業者調査表(証乙第一六号証の一ないし四)の内容に偽りがあり、天理市内には昭和四八年当時、回転焼業者は一軒しか存在しないこと。

(2) 右判明している一軒の業者も回転焼専問でなくタコ焼やジュース類の小売を兼業しており、その中から回転焼の差益率のみを推計する経過が不明であり、従って上告人の所得の推計の資料となり得ないこと。

2 なるほど原判決は、上告人に対する推計の必要性については判断しているが推計の必要性と処分内容の当否とは別問題であることはいうまでもない。原審もこの点について、上告人の主張として、一応は事実の整理をしている(原判決五枚目表ロ、および六枚目(ニ))。

3 しかし、右推計の資料として適切か否か(すなわち推計の答否)については、原審は理由中において全く判断を示しておらず、この点において原判決は理由不備又は判断遺脱の違法がある。

二、原判決は採証法則違背の違法があり、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

1 原審は要するに、対立当事者である被上告人が、一方的に作成した資料(証乙第一六号証の一ないし四、同二〇号証の一ないし四)をうのみに、上告人の具体的な調査にもとづく立証(業者は一軒しかないこと、その一軒の業者についても差益率の推計はできないこと)を合理的理由を付することなく排斥したものであって、推計の合理性(必要性のみでなく)についての立証責任を負う被上告人の負担を軽減したが、これは明らかに採証法則上違法である。

2 ことに、業者が一軒しかないことについては、被上告人から出されている原資料も一軒のみであって(証乙第二〇号証の二ないし三)、もう一軒についての資料は、原資料(青色申告書)から転載したとする証乙第一六号証の二ないし三のみである。

この点からも「業者は一軒のみ」とする上告人の主張・立証をうらづけている。

3 さらに、存在している一軒の業者についての資料(証乙第二〇号証の二ないし三)をみても、その取扱い品目は「ソフトクリーム・コーラ・マンジュウ」とあるのみで、実際は他の品目も扱っていたのに記載がない。つまり、信用性の乏しい資料と考えるれる。しかも、右資料から「マンジュウ」つまり回転焼のみの差益率は計算できず、これだけでは推計の資料となしえないものである。

以上

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